今年の2月に総理秘書官がLGBTに関する発言で更迭(こうてつ)されました。「オフレコ(off the record、談話などを公表しない、あるいは非公式にすること)」の席での発言が表に出たためだったので、国会議員の多くは、馴染みのメディアの記者さんとの会話にも注意しなければならないと思ったことでしょう。
永田町の国会内、議員会館、自民党本部には、新聞、テレビ、雑誌、ネット配信の記者さんからフリーランスまで、実に多くのメディア関係者が出入りしています。特に大手の新聞、テレビはさまざまな政党や政策領域、派閥ごとに担当者を配置して、情報を入手しようとします。例えば、昨年末には防衛費の財源問題で自民党の中は緊縮財政派と積極財政派に分かれて大論争となりました。こんな時は会議室の外にはメディアが鈴なりになって集まり、部屋を出入りする議員から会議の様子を聞き出そうとします。閣僚経験者や党幹部には多くの記者さんが群がり、コメントを求めます(「ぶら下がり」と言います)。その勢いや凄まじいもので、傍(かたわ)らを歩いていても圧倒されます。残念と言いますか、まだ新人の域を出ない私のところには誰も寄っては来ません(笑)。ただ、医療関係の案件については顔見知りの記者さんもできて、しばしばコメントを求められることも多くなってきました。一方で、言っても良いことと、まだ表には出せないことの判断をしなければなりませんから、発言には慎重さが必要です。
先ほどの財政論議については、積極財政派を取材している記者さん達とよく話をします。ややもすると自分の考えや主張の中に閉じこもってしまいがちですが、記者さんに自分の考えを披瀝(ひれき)することで自らの知識の理解度も分かります。彼らもその領域の担当記者ですから、その意見を聞きながら自分の考えを修正することもできます。そんな時は記者さん達と仲良くすることの重要性を感じます。一方で、やはり相手は報道の世界の人間ですから、余計なことを話す、他人を批判するなどは避けなければいけません。斯様(かよう)に記者さんとの付き合い方は難しいのです。
この仕事について1年半になりますが、懇意の記者さんも多くなってきました。どこまで心を許すか、そのあたりを探りながらの付き合いは正直、疲れますが、記者さんのほぼ全員が私よりずっと年齢が下なので、彼らとの話が弾むといつの間にか学生に説教しているみたいになって、こちらのペースに巻き込めます。そうやってお互いの信頼関係ができればいいのですが、彼らの方が一枚上手だったりして…。