【松本尚衆議院議員コラム】見て、聞いて、永田町 第16回 安倍総理の一周忌を迎えて

【松本尚衆議院議員コラム】見て、聞いて、永田町 第16回 安倍総理の一周忌を迎えて
松本尚衆議院議員

 7月8日に安倍晋三元内閣総理大臣(以下、安倍総理)が逝去されて一年になります。この一年の間に私も事件の現場を訪れ、哀悼の意を捧げてきましたし、診療にあたった救急医の仲間にもその詳細(公判前ですので語れませんが)を伺ってきました。

 巷間には銃撃の不自然な点を挙げての陰謀説も流れていますが、私はそのような話に興味はありません。むしろそれらを否定しなければいけないと思っています。永田町では、折々に「安倍総理がいれば」という声も聞こえてきますが、いつまでもそんなことを言うのも好きではありません(医師であるせいか、ドライな考えなのかも知れませんが)。安倍総理を失った状況の中で、どのように国の政策を進めるべきかを考える毎日です。

 安倍総理が亡くなられて以降、岸田総理は昨年末に安全保障三文書を改訂し、その中に反撃能力の保有や防衛費の対GDP2%(約11兆円/年)までの増額を明確にしました。これは安倍総理でさえもできなかった政策転換であり、大きな評価が与えられると思います。

 その一方で、いくつかの政策はその歩みを止める、あるいは違う方向に進んでしまっています。

 例えば、皇位継承の問題はどうでしょう。令和3年12月に「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議が提示した旧宮家からの男系男子の養子縁組案は、その後の国会での議論が行われないままとなっています。

 また、LGBTなどの性的少数者への理解増進に関する法律については自民党内の意見が二分されたまま成立をしてしまいました。

 さらに、安倍総理の回顧録では財務省の緊縮財政策を痛烈に批判していますが、この一年で党内ではアベノミクスを否定する論調が出始め、それは政府による財政政策の中にも色濃く反映されています。確かにプライマリーバランス(PB)の健全化は必要でしょう。しかしそれは今達成させるべきことではありません。今は安定的な賃金の上昇を伴う経済成長を推し進めるべく、政府が先頭となって投資を行うべき時です。PBの健全化はその後でも良いのです。

 安倍総理を失った清和政策研究会(安倍派)は後任の会長を決められないままです(皆さんがこの稿を読む頃には明らかになっているかも知れませんが)。自民党内の派閥で「政策研究会」の名を冠しているのは安倍派のみですが、残念なことにこの一年、政府を動かすような斬新で、革新的な政策は一つも打ち出せていません。こういった状況を目の当たりにして「『安倍総理の遺志を引き継ぐ』なんてよく言えたもの」、と言いたくなります(実際に派内でもそう発言しています)。

 私は真正の保守政治家としてこの一年を振り返り、次の一年に向けて保守政策の遂行に全力を尽くしたいと思うのです。

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