2016年8月の「印西市制20周年記念花火大会」中止に伴う、印西市と市内の花火業者「印旛火工」との民事訴訟は、21年8月に千葉地裁佐倉支部が市に1200万円の支払いを命じ、市の反訴を棄却する「業者側の全面勝訴」判決が確定してから1年が過ぎた。本紙では、8月29日に印西市秘書広報課に8項目の質問状を提出した。
しかし、印西市からの回答は、事実上の「ゼロ回答」とも言える内容だった。印西市からの回答全文を掲載するとともに、この問題を改めて読者の皆さんと共に考えていきたい。
本紙読者から、本紙9月4日号の「3年ぶりの花火大会に歓声 利根町」を読んで、このような感想が届いたので紹介する。
・花火大会 2016年のドタン場での中止…。印西市はもうずっと実施しないのでしょうか。
印西市 70代女性
このように、裁判自体は終結したが、印西市民の間ではいまだに花火大会中止問題に対する印西市の対応への不満が残っている。
本紙4月3日号でも報じたが、今回の事件での経費は、賠償金・遅延損害金・弁護士費用など合計で1817万9026円。これらの金額は全て市民の税金が使われている。印西市がイベント中止保険に加入していれば、避けられたはずの支出である。
本紙では、判決確定から1年が経ち、印西市が一連の花火大会中止事件の教訓とどのように向き合い、今後の市政運営に役立てていくかを知るために、印西市に質問状を提出した。
主な内容は▽当初から和解という形で問題解決を図ろうとしなかった理由▽反訴の経緯▽興行中止保険(イベント中止保険)の加入について▽昨年出した「総括」をやり直す考えの有無▽具体的な再発防止策の検討――など。
板倉正直印西市長への質問事項 【質問書全文】
利根新報は、2016年(平成28年)8月29日の印西市制20周年記念花火大会中止に関し、印西市に賠償責任を認める判決が2021年(令和3年)9月に確定してから1年を迎え、改めて今回の裁判について、次の通り書面にて質問します。
誠意あるご回答の程、よろしくお願いします。
・印旛火工側の業務委託料1500万円の請求の提訴に対し、印西市側は反訴という形で応じたが、当初から和解という形で問題解決を図ろうとしなかったのはなぜか。当初の「ボタンのかけ違い」とも言える事態に陥った理由は何か。
・裁判の最中に印西市は反訴を提起したが、「反訴」を誰がどういう経緯で提案したのか。昨年市が出した総括では「裁判の中で市が対等に主張する必要がある」と反訴した理由を示しているが、公権力を行使する印西市役所と中小零細企業との非対称な力関係を考慮しなかったのか。
・判決では「被告(印西市)には除草・整地義務違反があると認められる」と、花火打ち上げ場所の除草・整地義務違反を認めたが、主催者の印西市がやるべき業務をなぜ事前にリストアップしておかなかったのか。事前準備の不足がひどすぎるのではないか。
・印西市は花火大会開催に当たり、興行中止保険(イベント中止保険)に加入していたのか。前もって加入していれば、花火大会費用など大会中止に関する損失分は全て保険で賄われ、今回のような裁判自体が起きなかった可能性が高いと考えられるが、その点はどう考えるのか。判決確定後は市主催のイベント開催時には必ず興行中止保険に加入し、万一のトラブル防止に対応しているのか。
・昨年の「総括」では再発防止策を示したが、精神論頼みになっていないか。また「総括」では責任の所在に関する記述が不明確とも読めるが、外部の専門家を招くか第3者委員会を設置するなどして総括をやり直す考えはあるか。
・再発防止策の一環として、一例として「花火大会運営に関しては先進事例の自治体に研修に行く」など、具体的な再発防止策を検討しているか。
・今年1月に市長が「けじめ」として減給10%3カ月、副市長と教育長が減給10%1カ月としたが、市に約1800万円近くの損害を与えた事との釣り合いが取れていると考えるか。また、判決確定から1年が経ち、市長は一連の事件についての反省をどう今後の市政に活かしていくか。
・最後に、新年度の5月と8月の印西市定例記者会見で質問事項を「1回につき2問まで」と制限したが、何か意図があるのか。
※【注釈】質問状の最後には「定例記者会見で質問事項を1回につき2問まで、と制限した意図」を入れた。理由は、これまでの定例記者会見では質問事項への制限は無く、花火大会中止裁判に関する質問を含め質問できたが、今年度から制限が掛かったからだ。
hanabisoukatsu◆印西市からの回答全文
1・花火大会について
この度、個別具体なご質問をいただいておりますが、裁判で審理が尽くされたこの件については、当時の状況等を改めてここで言及することは控えさせていただきます。
なお、市としましては、裁判の結果を重く受け止めており、二度とこのようなことを繰り返すことのないよう、この事を教訓として、職員が一丸となり、さらなる市民福祉の向上に努める決意をしておりますので、ご理解願います。
2・定例記者会見について
定例記者会見における報道機関からの質問の取り扱いについてでございますが、令和4年第2回定例記者会見から、1回の質問を2項目までといたしました。
理由といたしましては、多くの報道機関にご出席いただいている中で、各社の質問機会の均衡を図るためでございます。再度の質問もできますので、ご理解願います。
※この問題についてのご意見・ご感想をお寄せください。
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