【花火大会中止問題キャンペーン】問題点ありの「総括」

【花火大会中止問題キャンペーン】問題点ありの「総括」

 「印西市制20周年記念花火大会」中止(2016年8月)に伴う、印西市と花火業者「印旛火工」(同市荒野)との民事訴訟は、21年8月に千葉地裁佐倉支部が市に1200万円の支払いを命じ、市の反訴を棄却する「業者側の全面勝訴」判決が出された。しかし、追及すべき問題点は残っている。本紙は「花火大会中止裁判問題キャンペーン」として、この問題の追及を続ける。
【利根新報WEB版に事件の年表を掲載しています】

 花火業者勝訴の判決を受けて市は、昨年11月に「市制施行20周年記念花火大会総括」を発表。「総括」では、花火大会中止から裁判終結までの経緯や問題点、再発防止策を12ページにまとめたが、再発防止策で示した職員研修は「判決の指摘事項を踏まえた委託業務の発注者としての心構えの醸成」と、精神論頼み。
 また「総括」では、判決で指摘された「事前の調査不足」や「業者との協議不足」、「協議による解決に向けた努力の欠如」など、計7項目の問題点について、いずれも責任の所在が不明確な記述内容だった。
 特に「花火大会中止後の問題点」の項目で「花火打揚業務委託料の支払いをめぐり、代理人協議や調停においても協議が整わず、訴訟までに発展したことは、大いに反省しなければならない問題」との記述があるが、今回の問題を悪化させた「反訴」の提案者に関する記載が欠けていた。
 「総括」公表時の記者発表で、記者から「外部人材による第三者委員会での調査の必要性」を問われたのに対し、市の担当者は「(事件から)5年の間で裁判で調査をやりつくしている。判決文という形で示されている。(第三者委員会の)外部委託は検討したけど『自分たちでできるだろう』と判断した」と、不必要との考えを示した。
 その上で「自分自身で浄める『自浄作用』が必要と判断。再発防止策を立てられないような組織文化はどうなのだろう」と述べ、あくまでも内部人材での問題解決にこだわった。
 一方、事件当時の環境経済部長(64)ら3人の市幹部職員は全員戒告処分、その他の市職員2人は文書での厳重注意となった。「戒告」は、重い順に▽免職▽停職▽減給▽戒告、の順で軽い処分。市人事課は取材に対し「市の懲戒処分に合わせて判断した」という。同課によると、戒告処分を受けた市職員は「処分については受け止める。結果責任として受け止める」と話したという。
 板倉正直市長は22年1月から3カ月間の給料10%減額、杉山甚一副市長と大木弘教育長は同年1月から1カ月間の給料10%減額と、「けじめ」を示した。
 今回の事件での経費は、賠償金・遅延損害金・弁護士費用など合計で1817万9026円。これは印西市民が納めた税金からの支出である。
(本紙編集部)

印西市制施行20周年記念花火大会裁判年表

2016年(平成28年)2月29日花火打ち揚げ業務委託プロポーザル(企画提案書提出期限)
同年3月25日花火打ち揚げ業務委託契約締結
同年6月8日花火大会開催における説明会(千葉県主催)
同年6月13日花火大会における除草業務委託契約締結
同年7月21日打ち揚げ場所除草のための現地確認
同年8月10日花火大会全体会議
同年8月12日除草業務状況現地確認
同年8月27日・花火大会当日正午に開催の態度決定。19時30分を過ぎても打ち上げ準備が整わず、20時10分に大会中止のアナウンス
同年8月29日印西市が印旛火工から聴き取り
同年9月1日印西市が印旛火工からの報告書受領
同年9月8日印西市が市議会全員協議会に経緯説明
同年9月29日印西市議会に調査特別委員会が設置→最終報告(2016年12月21日)
同年10月31日代理人協議→最終報告(2016年11月30日)
同年11月1日印旛火工から業務完了報告書
2017年(平成29年)2月8日印西市から印旛火工へ文書通知(民法第542条による契約解除)
同年3月1日印西市が広報(協議状況の報告)
同年4月10日印旛火工代理人から印西市代理人へ反論(印西市からの通知に対する回答・反論)
同年10月17日印旛火工が佐倉簡裁に委託料1500万円の支払いを求め調停申し立て→調停不成立(2017年11月29日)
同年11月29日印旛火工が千葉地裁佐倉支部に印西市を相手取り提訴
2018年(平成30年)1月16日第1回口頭弁論
同年3月13日第2回口頭弁論
同年3月20日印西市議会で市執行部提出の反訴議案を可決(賛成12、反対8)→反訴を提起(2018年5月28日)
同年5月8日第3回口頭弁論
同年6月26日第4回口頭弁論
同年8月7日第5回口頭弁論
同年10月9日第6回口頭弁論
同年11月27日第7回口頭弁論
2019年(平成31年)2月4日第1回弁論準備手続
同年4月8日第2回弁論準備手続
同年(令和元年)6月12日第3回弁論準備手続
同年11月25日第4回弁論準備手続
2020年(令和2年)1月29日第5回弁論準備手続
同年3月17日第6回弁論準備手続→新型コロナ感染拡大で以降の裁判期日が同年8月まで延期
同年7月19日印西市長選で板倉正直氏が3回目の当選。3期目の市政運営を担う
同年8月31日第7回弁論準備手続
同年10月26日第8回弁論準備手続
同年12月23日第9回弁論準備手続
2021年(令和3年)2月2日第8回口頭弁論(証人尋問)
同年3月4日和解期日
同年4月23日和解期日→和解同意不成立
同年6月22日第9回口頭弁論(結審)
同年8月31日千葉地裁佐倉支部が原告(印旛火工)勝訴の判決。印西市に委託料1200万円と年6分(6%)の損害遅延金支払いを命じる
同年9月15日千葉地裁佐倉支部の原告(印旛火工)勝訴の判決確定(印旛火工、印西市双方の控訴なし)
同年9月17日千葉日報が原告勝訴判決確定を報道→翌日、毎日新聞など各社が報道
同年9月22日印西市議会全員協議会で判決内容などを説明
同年9月30日印西市議会で市執行部提出の損害賠償金を支払う補正予算を可決
同年10月8日印西市が印旛火工に委託料1200万円と損害遅延金6%(274万5863円)の支払い完了
同年11月1日広報紙に「裁判結果を受けて」の市長コメントを掲載
同年11月22日印西市が「花火大会総括」と市長ら市三役の給料を3カ月間(副市長・教育長は1カ月間)10%カットを市議会全員協議会に説明→同日に報道発表
同年12月15日広報紙と印西市公式サイトに「市制施行20周年記念花火大会総括」を掲載
同年12月17日市長ら市三役の給料を3カ月間(副市長・教育長は1カ月間)10%カット議案を市議会が可決(賛成20、反対1)
同日確定した裁判経費を公表。合計1817万9026円(賠償金1200万円、遅延損害金274万5863円、訴訟費用負担分10万6535円、弁護士費用等332万6628円)
同年12月22日花火大会当時の環境経済部長(64歳)ら3人の市職員を戒告処分
(印西市資料、新聞報道などから作成)

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