放置竹林がエネルギー源に 合同会社「竹取物語」の新たな挑戦

放置竹林がエネルギー源に 合同会社「竹取物語」の新たな挑戦

 伸び放題で手入れされない放置竹林が全国各地で問題になっているが、「竹をエネルギー源に変える」という新たな取り組みに挑戦する企業が栄町で発足した。合同会社「竹取物語」は「竹の6次産業化をけん引する」を目標に掲げている。竹取物語の起業に尽力した、代表社員の塚田湧長さん(82)に取り組みについてインタビューした。

住民パワーが押し上げた会社 塚田湧長さん

塚田湧長さん

 塚田さんたちが合同会社「竹取物語」を立ち上げるきっかけとなったのは、栄町内にある放置竹林の有効活用だった。
 竹は1年間で約10㍍成長し、3年間では成木になるという。栄町内には約57㌶の竹林があり、手入れされない放置竹林の竹は伸び放題で「倒れた竹による送電トラブル、通行障害」などの竹に関するトラブルをよく耳にするという。
 竹は伐採してもごみとして回収されず、ごみ焼却炉では燃やせない。伐採した竹は腐るまで放置するが、竹は元々腐りにくい性質で竹の空洞に入った雨水が蚊の発生源になるという。
 一方で、竹は持続可能な素材として注目され、割りばしの素材に使われるなど、方法次第では「資源」としても使えるという。
 このため塚田さんらは、竹の有効活用を推進し脱炭素社会の実現につながるプロジェクト「かぐや姫プロジェクト」に参加。竹をエネルギー源にする発電を行うという。
 具体的には▽成長した3年物の竹を伐採しチップにする▽伐採した竹を蒸し焼きにして水素ガスを取り出す▽取り出した水素ガスをスターリングエンジンで燃やしてタービンを回し発電する―という工程。
 また、竹を蒸し焼きにすると水素ガス・竹炭・肥料が出来るので、CO2を極力出さずにエネルギーが得られるという。

エネルギーの地産地消

 塚田さんは「邪魔者の竹がエネルギーになる。町内の竹林が整備され発電の材料になる。まさに『エネルギーの地産地消』」と、将来への展望を熱弁する。
 将来的には栄町内に1000キロワット規模の発電所を整備し、普段は売電で電力会社に販売。災害時には自前で電気を供給できる体制を整える構想だ。
 「竹林を整備してみんなが訪れる場所にしたい。整備した竹林は観光地になる」と、塚田さんは栄町が“竹で地域おこし”の将来を見据えていた。

プロフィール

 1941年長野県生まれ。長野高校、工学院大学工学部電気科卒業。1972年栄町に移住。
 日立製作所中央研究所などを経て、2020年栄町議選に初当選。
 住民活動に長年取り組み、栄町さくらの会(会長)、のら市の会(事務局)、キャンドルナイトの会(同)、のら里くら里健康ウォーキングの会(同)、NPO法人まちづくりサポートひと・まち倶楽部(理事長)

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