【松本尚衆議院議員コラム】見て、聞いて、永田町 第13回 国会でヤジる 

【松本尚衆議院議員コラム】見て、聞いて、永田町 第13回 国会でヤジる 
松本尚衆議院議員

 「ヤジ(野次)は議場の華」などと言われます。テレビを通して見る国会の本会議や予算委員会では聞こえてきませんが、実際の現場ではかなりのヤジが飛び交っています。基本的に野党議員が政府や自民党の質問者に対してヤジを飛ばすことが多いのですが、野党の質問があまりにも常識を逸脱していたり、無理筋の内容だったりすると、われわれ自民党議員も黙ってはいません。

 さて、衆議院規則には「議事中はみだりに発言し又は騒いで他人の演説を妨げてはならない」と定められていて、議長や委員長が許可した者のみが正規の発言権を持ちます。それ以外の者の発言は不規則発言、つまり「ヤジ」と呼ばれることになります。
 しかし、本会議での総理の所信表明演説や施政方針演説などでは、総理を応援する意味で自民党議員は大きな声で「よぉーし!」「その通りっ!」「そうだぁ!」と応援の声を発します。一方、野党は「そんなのでいいのかー!」「おかしいだろー!」などと総理を批判します。総理にしてみれば、自民党からの応援が多ければ元気が出るでしょう。力強い総理の言葉を聞けばますます応援ヤジはその大きさを増します。
 そんな相乗効果や昂揚感が「議場の華」と言われる所以(ゆえん)でしょうか。与野党双方によるヤジの応酬になると議場は騒然となります。そういう時は民主主義の醍醐味のようなものを感じますが、実は「全部、不規則発言」です。

 規則上、ヤジは発していけないことになっていますから、それが甚だしく議事の妨害となったときには、議長(あるいは委員長)がヤジを制止することができます。この場合、まず注意が与えられ、なお収まらなければ発言を禁止し、さらに命令に従わなければ議場の外に退去させることができるとされています。
 ただし、「言論の府」である国会ではヤジと雖も(いえども)発言を禁ずることには慎重であるべき、との意見もあり、ヤジを議事妨害とするか否かの判断は議長(委員長)の判断に委ねられています。
 また、ヤジの内容によっては懲罰委員会に諮られることもあります。昭和28年には吉田茂首相が小声でしたが「ばかやろう」と言って同委員会にかけられました。結局、解散総選挙になったので懲罰は科せられていませんが…。

 与野党対決法案の審議ではヤジのボルテージは高くなります。ヤジったところで法案が思うように変わることなどないのですが、傍目でみると静かに淡々と議事が進むよりは、侃々諤々(かんかんがくがく)、口角泡を飛ばす方が良き姿のようにも思います。それを彩る(いろどる)のがヤジなのでしょう。

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