【松本尚衆議院議員コラム】 見て、聞いて、永田町 第9回 “国対”って何?

松本尚衆議院議員

 国会対策委員会(通称、国対)。国会には衆議院、参議院にそれぞれ常任委員会と特別委員会が設置されていますが、この立派な名前を持つ委員会はこれらのどれでもありません。つまり、国対は国会の中では“非公式”の委員会なのです。

 国会は立法機関です。与党、野党を問わず、法案の審議には多くの質疑応答が行われます。与野党が激しく対立するような法案であれば(例えば、平成27年に成立した平和安全法制など)、膨大な審議時間を費やしたとしても結論を得ることができないかも知れません。実はここに国対の役目が存在します。国対は各党にあります。国会の審議が円滑に進むように、国会の日程や法案審議のスケジュール等々、国会の運営を与野党間で非公式に折衝しているのです。

 「非公式に」ということは国会運営を決定する「公式な」組織もあるわけで、それが議院運営委員会(通称、議運)です。こちらはれっきとした常任委員会です。だったら、議運だけあればいいんじゃないか?ということになるのですが、ここが国会の不思議な部分です。議院運営委員会における審議内容は国会の公式な発言として記録、保存されます。ところが国会運営の中では、記録には残せない水面下でのやり取り――推察するに…法案内容とは別世界の、政局がらみの与野党間の取引など――も話し合う必要があるため、そのような法案審議の裏舞台として国対が生まれたのでしょう。
 このことは「国対政治」などと言われ、批判の対象にもなった時期もありましたが、小選挙区制の現在では与野党の対立も強くなりがちで、国対は国会運営の潤滑油(分かりやすく言えば、根回し的役割)として必要な組織となっているわけです。非公式な組織なのに国会内には各党の「国会対策委員会室」なる部屋があるのも面白いところです。

 なんだか、「廣ク會議ヲ興シ萬機公論ニ決スベシ(五箇条の御誓文)」のような潔さを感じない仕組みにも思えますが、数百人の国会議員が侃々諤々(かんかんがくがく)、言いたいことだけ言っていてはまとまるものもまとまりません。迅速に法律をつくり、国民の皆さんの生活に資するためには、事前の準備――打ち合わせも必要になるのです。国対はそんな国会の“知恵”の産物なのでしょう。

 ちなみに、長く国対にいる議員はやがて“国対族”と呼ばれ、国会運営を仕切る存在になっていきます。「国対は、一度は経験しておくのがいいよ」と先輩議員からはよく言われます。国対にかかわると党部会への出席が難しくなりますが、国会の知恵を学ぶことも必要かも知れません。

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