火災対応、井戸水からヒ素検出… 市民生活に影を落とす 印西市の水道問題

 「給水区域拡大に関する請願書」が印西市議会で採択され約3カ月が過ぎたが、市内の水道未給水地域では市民生活を脅かす事態が相次ぎ、未給水地域の市民の間から水道整備を求める切実な声が強まりつつある。

消火栓が無い地区で火災 「消火活動に不安」の声

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 9月10日午後7時頃、印西市滝の三角稲荷神社付近の倉庫で建物火災が発生し、隣接する住宅など含め合計約1300平方㍍が全焼した。火災によるけが人は無かった。
 近隣住民や印西地区消防組合によると、火災現場は水道未給水地域で消火栓は無く、3カ所の防火水槽を使い消火活動にあたったが、完全に鎮火したのは翌11日早朝だったという。
 このため住民の間から「消火栓があれば消火活動が早く済んだのではないか」「消火活動の際に防火水槽の水が足らなくなり、消防のタンク車が水をくみに行き来したのではないか」との消火活動への不安や疑念の声が上がっている。
 同組合警防課は「消火で防火水槽の水が減ったりすることはある」としながらも「消火活動中に水が途切れた事は一切無い」と否定した。その上でタンク車の出動を「タンク車は防火水槽に水を補水するために動いていた」と説明した。
 同課は「防火水槽や消火栓を作る作らないは印西市が担当している」といい、住民の間からは「防火水槽だけでは火災の際に不安なので消火栓を拡充してほしい。その為にはまず集落に水道管を引いて欲しい」と、市への要望を訴えた。

井戸水から基準値超えのヒ素検出

千葉県「井戸水を飲用する皆様へ」より一部引用

 印西市山田地区の井戸水から、水質基準値を超えるヒ素が1㍑当たり0・015㍉㌘が検出された事が明らかになった。ヒ素は毒性が強く、水質基準値で「1㍑当たり0・01㍉㌘以下」とされ、住民の間からは井戸水の水質検査の申し込みが相次ぎ、井戸水の危険性が浮き彫りになった。
 市環境保全課によると、地区の住民が今年8月頃に自宅井戸の水質検査を検査機関に依頼し、8月中旬ごろにヒ素検出の結果が届いたという。その後、複数の近隣住民が10月上旬に自宅井戸の水質検査を検査機関に相次いで依頼したという。
 市ではヒ素を除去する特殊な浄水器の取り付けへの補助金を出しているという。
 同課によると「印西市のどこからでもヒ素が出る」といい、千葉県が2000年に作成した「地下水ヒ素濃度分布図」でも裏付けられている。
 一方で産業廃棄物の不法投棄などさまざまな要因での地下水汚染が懸念される事から、同課の担当者は「井戸水は何か出るか分からない。まずは水質検査してください」と、井戸水利用世帯にに向けて水質検査を呼びかけている。
 一方で市水道課は、井戸水からのヒ素検出を「基準値を上回った数字が出ている事は把握している」としながらも、市内の集落への水道敷設要望が数十件来ているため「集落の規模、有害物質の基準値を上回っているか、その他要望を総合的に勘案して優先順位を決めさせていただいている。要望してもすぐに(水道が)できるかどうかはお答えできない」と回答した。
 その上で、水道敷設について「総合的に勘案して進めていく」と述べた上で、「請願が出たので必要性の調査検討はしていく。国の事業認可を得る際に合理的な説明をする為にも調査検討は必要」と述べるにとどまった。

読者からの声

 本紙10月号を読んで編集部に寄せられたお手紙から「印西市の水道問題」に関する読者の声の一部(要旨)を紹介します。
   ◆   ◆   
 水道給水地域拡大の請願の記事で(10月号掲載の)市町村の図を見て驚きました。板倉市長は身近な人間でしたが「ちゃんと指導力発揮せい」と言いたいですね。
 (印西市・70代男性)
   ◆   ◆   
 「印西市議会だより」を印西市の秘書広報課に自宅配送を依頼し、印西市議会の質問と回答等を把握しています。
 貴紙の水道給水区域拡大の請願は大変興味がある案件で、印西市長の答弁を理解できました。今後とも鋭い切り口で取材するとともに市民目線の新聞に期待をしております。
 (印西市・70代男性)
   ◆   ◆   
 NT(ニュータウン)地区に住んでいると、水道問題を全く知らなかった。
 井戸水が使えることは知っていたが、上水道もありの物だと思っていた。なぜこんなことになっているのだろうか。下水道処理は同じなのですよね?
 (印西市・50代女性)
   ◆   ◆   
 印西市議会の記事がとても気になりました。
 (印西市・70代女性)
   ◆   ◆   
 長柄町出身の私は、子どもの頃から水道水を飲んでいました。印西町(当時)に42年前に来たときは、井戸水にビックリ!!しましたが、いまだに井戸水。
 もう、生きている間に水道水を飲むことは、ないでしょうね…。残念です。
 (印西市・60代女性)
   ◆   ◆   
 まずは市内全域を給水区域に指定する「給水区域の拡大」が大切なのだが、やる気を全く感じない。
 市長が変わらないと「地域間格差の是正」はできないのか!?
 (印西市・50代男性)

印西市の水道給水区域拡大に関する本紙記事

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