衆議院の本会議は火、木、金曜日の午後1時から開かれることが通例です(決まっているわけではなく、いつ開会するかは議院運営委員会で決定されます)。議院内や議員会館内では本会議の開会10分前に予鈴が、本会議開始時間には本鈴が鳴らされます。今回はこの「予鈴」と「本鈴」についてのお話しです。
「鈴」と言うくらいですからその音色は?と言えば、昔の黒電話の音、文字で表すなら「チリリリリ…」とか、「ジリリリリ…」とかでしょうか。ただ、「チ」ほどの軽い音ではありませんし、「ジ」のように濁った音でもありません。非常ベルの音に近い感じです。
国会議員になって以来、この予鈴・本鈴が妙に気になったので衆議院の事務局に問い合わせてみました。それによると、もともとは本鈴のみが鳴らされていたそうで、衆議院先例集の明治24年6月の記述には「議長ハ守衛ニ命ジテ号鈴ヲ鳴ラサシメ以テ開議ヲ報セリ号鈴ノ鳴リタル後各部ヨリ議員ノ議場ニ参集シテ…」とあります。かつては職員が鈴を振りながら廊下や各控室を回って開会を知らせていたそうですが、大正14年より電鈴となっているそうです。ところが、開議時間に本鈴が鳴らされてから議員が議場に参集すると開議時間に遅刻してしまうことになります(まぁ、今ほど時計があちこちにある時代じゃなかったのでしょう)。そこで昭和31年1月の議院運営委員会で、「開会10分前に開会予告の振鈴を鳴らしてくれれば議員会館にいる議員が正規の振鈴が鳴るまでに本会議場に集まることができる」との提案を受け、予鈴を鳴らすことになったとのことです。
予鈴は3回鳴ります。1回の長さは15秒間、開会10分前に1回目。10秒休んで2回目。また10秒休んで3回目です。本鈴は連続して2分間です。本鈴が鳴っているとき、私はすでに本会議場の中にいるので聞いたことはありませんが、細田議長が本会議場に入ってくるときに開く扉を通して本鈴が漏れ聞こえてきます。ちなみにですが、平成10年10月の第143回国会(臨時)まで、本鈴が鳴るまで議員は本会議場に入れなかったそうです。
国会は国権の最高機関です。わが国の民主主義を具現化している本会議の開会を告げる、院内に鳴り響く予鈴と本鈴の音を聞くと、やはり身の引き締まる思いがします。あれが「ピンポンパンポ~ン」なんていうチャイムだったら、何か気の抜けた感じになるでしょう。いささか古くさいけど緊張感のある音色が使われている理由が分かる気がするのです。