【松本尚衆議院議員コラム】見て、聞いて、永田町 第15回 官僚たちのこと

松本尚衆議院議員

 安倍元総理の回顧録が出版され話題になっています。この中で安倍元総理は、経済産業省の役人には、「私の面前で、官僚数人が延々と政策を話しまくる」と、その行動に好意的な評価を与えています。
 一方で、「(財務省官僚は)私の方針を覆すためにいろいろと画策するわけです」と批判したり、「なぜ、私の手元にない資料を、野党議員が持っているのか。『厚労省は野党と通じているんじゃないのか』と疑心暗鬼に陥りましたよ」などと吐露する場面があります。
 基本的に、官僚の皆さんは国益のために仕事をしていると思いますが、時に総理ですら敵に回すことを厭わないのかも知れません。

 とは言っても、彼ら官僚は間違いなく優秀です。20歳代の、私から見れば息子や娘のような若者でも法律に詳しく、弁舌爽やかに、私の質問や意見に対しても理詰めで説明や反論をしてきます。この能力ある官僚たちを上手く使いこなせなければ―――言い換えれば、味方につけなければ、政治家は自らの政策を実現することはできないでしょう。
 これまでにも、高額な給与や退職金、定年後の天下りなどで、何かと批判の的になってきた霞が関の官僚ですが、彼らが優秀でなければ国の運営は立ち行かなくなるに違いありません。表面的な部分だけをみて、彼らの仕事の「対価」を小さくしてしまうことは、それこそ国益を損なう愚行です。

 実は、官僚になろうとする大学生がどんどん減っています。国家公務員職(いわゆるキャリア)試験の倍率は2012年が17・2倍であったのに対し、2021年には8・5倍にまで低下しています。このことは若い人たちの官僚という職に対する価値観が変わってきているためだと思います。
 特に近年では、野党議員に追求ばかりされているイメージが定着していることや、委員会質問の通告が遅いために、連日深夜までその答弁の準備に追われることなどが、この職への忌避につながっているのだろうと思います。
 ましてや、彼らを人前で怒鳴ったりしてそのプライドを傷つけるような行為はもっての外ですが、そんな時でも彼らは黙って耐えています。

 こんなことを続けていれば、若い人材は官僚に対する魅力を感じなくなるのは当然でしょう。このような状況を受けて自民党内でも、「委員会質問の通告は質問日の2日前の午後5時まで」を厳守するよう通達が出ました。人事院も官僚の働き方改革を進めるよう、提言をまとめています。

 政治家は国の在り方を示すのが役目ですが、官僚の皆さんはその在り方を政策に具体化していくのが仕事です。彼らを国の宝だと思って、国会議員は大切にしなければなりません。

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