【松本尚衆議院議員コラム】見て、聞いて、永田町  第11回 質問取り

松本尚衆議院議員

 今回のテーマは「質問取り」です。と言っても、皆さんには何のことだか分からないだろうと思います。衆議院には17の常任委員会と8つの特別委員会があります。テレビで観る予算委員会も常任委員会の一つです。委員会では与野党の議員が大臣や官僚に対して、法律や政策に関する質問をします。実はこの質疑のやりとりは、その場でいきなり行われるわけではありません―

 質問者は前日までに担当官庁に自分の質問の内容を伝えることになっています。これを「事前通告」と言います。そこで、官庁側がこの通告を聞きにいくことを「質問取り」というのです。彼らは聴取した質問に対する回答を次の日の朝までに作成して(委員会は朝9時から始まります)、それまでに大臣に質問内容と回答をレクチャーするのです。

 「なぁんだ、委員会質疑って出来レースじゃん」と言わないでください。委員会の質問時間は厳重に管理されています。質問する議員も、回答する政府も、互いに言いたいことを延々と述べていたのでは議論はいつまで経っても収束しません。一定の規律の中で議論を進めるためのルールと考えなければいけないのです。それでもいつも形の決まった一問一答で終わるわけではありません。「更問い(さらとい)」といって、大臣や官僚の回答を受けて質問を重ねることもしばしばです。質問者は自分の期待する答弁を引き出したいので、「更に問い」を仕掛けます。こうなってくると委員会の議論も俄然白熱します。聞いていても面白いです。与党側の議員は政府を困らせる質問は基本的にはしませんから答弁者を問い詰めることは滅多にないのですが、野党は政府を追い詰めたいので何度も更問いを続けます。もしかすると、そもそも質問取りの際に詳細に質問の中身を伝えていないかも知れません。

 質問取りは官僚にとっては重要な仕事なのですが、彼らの負担は相当なものです。質問の通告は「前日の17時までに」というのが概ねの常識ですが、議員がこの時間を守らないことが多いそうです。そうなると官僚側は夜を徹して回答を作成することになりますから、その勤務時間はかなりの量に上ります(当然、残業手当は財政負担増になります)。こういったことが霞ヶ関で働こうという若者の減少に拍車をかけているのでしょう。優秀な官僚は国を支える貴重な人材です。そのためにも彼らの働く環境にも配慮することが国会議員には求められると思います。

 ちなみに私はできる限り質問前日の午後の早い時間までには質問取りをしてもらうように心懸けています。

コラムカテゴリの最新記事