2022年9月8日、英国のエリザベス2世女王が崩御されました。私は、2008年に英国王立ロンドン病院に留学していたのですが、病院の正面玄関に女王陛下の写真が飾られていたのが印象的でした。ロンドンに滞在中は度々、バッキンガム宮殿の正門前まで散歩したりしていたこともあり、女王陛下が亡くなられたことには少なからず悲しい思いを抱かざるを得ません。
報道によれば、英国首相による女王崩御の発表から10分以内には官公庁の英国国旗(ユニオンジャック)は半旗にされたそうです。「半旗」とは、弔意を表すために旗竿の長さの半分の位置で旗を掲げることを指します。掲げられるのは多くは国旗ですが、都道府県旗、市町村旗、社旗、校旗なども用いられます。わが国には半旗の掲揚についての明確な規定は無いようですが、外国の国家元首の国葬時には半旗を掲揚するそうです。
日本でもっとも最近、半旗が掲げられたのは安倍元総理の逝去のときです。ところが英国における女王崩御のときと異なるのはその時期でした。総理官邸は通常、7時~17時に国旗を掲揚していますが、このとき半旗としたのは安倍元総理が亡くなられて3日後の7月11日(月)の午後でした。国会では官邸からの要請を受けて、衆参両議院が同じように対応しています。憲政史上最長の政権を担った嘗て(かつて)の主(あるじ)の急逝です。官邸がすぐに半旗を掲げなかった理由が分からないのは私だけではないでしょう。
実は、7月10日の日曜日、私のところに「官邸に掲揚されている国旗が半旗になっていない」との指摘があり、さっそく官邸に問い合わせました。「こういった状況での半旗掲揚は前例が無いので、まずは政府内で検討する」との返答でしたが、数時間後、「翌日午後より12日の17時まで半旗とする」旨の連絡がありました。
たしかに安倍元総理は現職の閣僚でもなく、立場上は公職にはない衆議院議員でしたので、政府は「すぐに半旗を」という発想に至らなかったのかも知れません。しかしながら、逝去の報を聞き、米国ではホワイトハウスが直後に半旗を掲げています。他国の反応も同様でした。こういった様子をみる限り、わが国の国旗に対する扱い――その根底にある想いというのは、国際感覚とは異なるのかなと思うのです。
私の幼い頃は、祝日には家の玄関に日の丸の旗を掲げていました。いつの頃からか、そんな習慣が消えてしまっていることも、官邸の半旗掲揚の顛末(てんまつ)にも表れているのでしょうか。エリザベス女王を悼む英国の半旗を見て、そんな感情を持った次第です。