医療現場の経験生かし国会で政策提言へ 松本尚衆議院議員独占インタビュー

医療現場の経験生かし国会で政策提言へ 松本尚衆議院議員独占インタビュー
本紙独占インタビューに答える松本尚衆議院議員=東京都千代田区の衆議院議員会館

 昨年(2021年)の衆議院総選挙で千葉13区で自民党から立候補し、激戦の末に初当選した松本尚(まつもと ひさし)衆議院議員に、国会での活動状況や政策提言などを伺った。

平場の議論は自由闊達

ー本日はお忙しいところありがとうございます。まず、初めての国会を迎えられて、その活動状況についてお伺いいたします。先生は「30余年の医師としての経験を国会にぶつけていきたい」と仰っていましたけれども、実際に国会議員として活動されてみていかがお感じでしょうか?


松本 そうですね、今開催中の通常国会は、初めてのしかも150日間という長期間の国会です。「ここは想像していた通り」ということと、「ここは予想と違ったな」ということとありますね。国会議員の仕事っていろいろとある中で、一番感心したのは「自民党内では皆さん、ほんとに熱心に議論しているのだな」ということです。
 世間の自民党に対するイメージというのは必ずしも良くない部分もあると思います。政権与党のせいでしょうか、厳しい目で見られているのだと思いますが、中から眺めるとまた別の見え方ってあるんですね。自民党内には、外交部会や厚生労働部会、安全保障調査会など、多くの部会とか調査会とかがあります。基本的に議員はこれらのどれに参加しても自由、というのがまず素晴らしいなと思いました。しかも連日、朝の8時から始まっています。複数の部屋でそれぞれの部会、調査会が開かれていますので、「はしご」して廻ることもできます。
 それぞれの案件に対して、担当省庁からの説明があった後は出席議員たちが発言や質問をします。質問には省庁からの回答があります。大事な課題については省庁が持ち帰って検討してくれます。そうやって議員たちの手が上がり終わるまで部会は続くのですが、まだ発言希望の手が上がっているのに、「もう1時間なので時間切れだからとか、次の会議があるから」と言って「今日はこれで終了」ということがありません。全員の発言が終わるまで、とにかく会議が続くというところが「素晴らしい」と思いました。
 もちろん発言したことがその通りになる保証はまったくありません。皆でやり取りを何回もやって、最後は部会長一任となります。多数意見や良い意見は部会長の裁量で取り入れられます。すべては部会長次第、と思われるかも知れませんが、少なくとも意見の集約がきちんとできる能力のある人が部会長になっていると思います。こんなふうに、自民党は平場の議論をとても自由闊達に行っていて、「実は、自民党ってよくやってるんだなぁ」というのが正直な感想です。
 こうやって部会での意見が反映された法律案が、今度は党の政調(政務調査会)に上がって、さらに総務会に諮られます。諮られる機関が上に行くごとに内容が更にブラッシュアップされていくわけです。もっとも党内にはいろんな考えを持っている議員がいるわけですから、全体の調和を優先するあまりに段々と「気の抜けた」文言になってしまうこともあるようです。


ー上に行くたび一本ずつ骨が抜かれていく感じですか?


松本 そうですね。私はまだ党を二分するような大激論は経験していませんが、それでもちゃんと決めるべき所はしっかり党の中で議論しているんだな、というのはちょっとホッとした気がします。あとはどれだけ「骨」の部分を残していくかというのは、議員の声の大きさとか、党幹部の人たちの裁量で決まりますから、きちんとした国家観のある人を国会議員に選んでおかないと背骨も何も無くなるという危機感は抱きますね。


ー有権者もそれを意識しなければなりませんね。


松本 その通りです。それと、「民主主義というのは時間がかかる」という点もよく分かりました。一つの物事を決めていく過程にすごく時間がかかる。国会議員は国民の代表ですから、皆で十分に議論をしなければなりません。それはそれでやむを得ないのですが、コロナ禍でも分かるように非常時になると意思決定に時間がかかるのは不利ですよね。こんなときのためにも、緊急事態の時にどういう仕組みやルールを準備しておけばよいかという議論は大事だなと思います。
 面白いなと思ったのは、国会の本会議を行う議場はとても荘厳で立派ですけど、やっていることはシンプルなんです。分かりやすく言えば、議長の「この法案に賛成の方の起立を求めます!」という声に、「賛成!」って起立して終わりなんですよ。


ー簡単なのですね。


松本 それまでに委員会で十分な議論を終えていますから、民主主義の最終的な議決行動はとても簡単なんですね。だったらその辺にある体育館でやったっていいんですが(笑)、1億2千万人が暮らしている、2千年以上の歴史がある一国の行く末を決める為の議決ですからね。それにはそれなりの「舞台装置」が必要で、だからこのような立派な建物が必要なんだなということを、国会議事堂の本会議場の議席に座って初めて感じました。ちなみに私の今国会での本会議場の座席は、2列目で議長の真正面の場所、ほぼ本会議場の中心に座っています。
 国会の中にはいろいろな慣習ってあるじゃないですか。今の時代、そんなことしなくてもいいんじゃないかなんていうのもあるのですが、明治時代に議会政治が始まってからずっと積み重ねられてきたものですから、まったく合理的でないことも国権の最高機関のための作法として考えれば理解ができます。例えば、記名投票。名前を呼ばれて、ズラズラと並んで、名前が書かれた白札(賛成)か青札(反対)を国会職員の人に手渡します。そんなのスイッチ一つ押せば済む話で、実際、参議院ではすでにそうなっているのですが、そんな非合理的とも言える作法もあるわけです。だけどもそれも一国の民主主義のための舞台装置、というふうに思うようになりました。国会に行ってみて初めて理解できて、すっかり考えが変わりましたね。

松本尚衆議院議員(中央)が地元視察の際に、木下駅南骨董市を案内する松本多一郎・自由民主党印西支部長(右)=1月3日、印西市木下の木下駅南骨董市

「必ず発言しよう」心に決めて部会に臨む


―1年生議員の苦労ってありますか?


松本 1年生議員といっても、私も30数年医療の現場で仕事をしていましたから、少なくとも新型コロナウイルス案件ではもっと意見を聞いてくれても良さそうなものですが、そうはならないことは少々残念にも思っています。
 なので、少しでも僕の意見を聞いてもらえる、取り入れてもらえるようにする為にはアピールをしなければなりませんから、「必ず発言をしよう」と心に決めて毎回、部会に臨むわけです。座る場所も考えます。最初は要領が分からないので隅っこに座っていましたし、1年生が発言していいのかどうか分かりませんでした。でも、とにかくアピールだけはしようと思って手は挙げました。会議室に最初は30人ぐらいいたのが、皆さん他の部会もあって途中退席するので、(最後は)5~6人ぐらいしか残らなくなります。そうすると、「はい、じゃ松本先生」とようやく発言の順番がやってくるのです。それでは誰にも聞いてもらえませんからね、会議の初めから前のほうに座るわけです。当選10回ぐらいの議員さんや大臣経験者とかの隣に図々しく座って(笑)、それで座長に向かって真っ先に手を挙げる。
 そうすると5番目ぐらいには指名してくれます。そうやってようやく松本の意見を多くの人に聞いてもらえるようになりました。そんな工夫や「ふてぶてしさ」が必要ですし、そうしないとこの世界は生き残れません。


―すごいですね。


松本 何も勉強すること無しに、委員会に出席して、本会議で採決に参加しているだけでも、見かけは議員としての職責を果たしているように見えるでしょう。でもそれでは「議員になることが目的」だけということになりますし、正直言ってそういう議員も沢山いるのだと思いますが、それではダメですよね。自分の意見を堂々と表に出して国政に反映していかなければなりません。日本国のために、日本国民のために国会議員になってるんですからね。その責任はしっかりと果たさなければいけません。その意味で一瞬たりとも気を抜けませんが、やり抜く覚悟は持ち続けます。


―衆議院はいつ選挙があるか分かりません。


松本 選挙で選んでもらえなければ国のために仕事はできません。なので、どんな政策を達成したいのか、そのために何をしているのか、これらをいつも皆さんに伝えなければと思っています。30代とか40代で議員になった人は20年、30年(議員活動が)出来るじゃないですか。何回も当選回数を重ねれば重ねるほど自分の考えが国政に反映できるようになるわけですから、正直若い議員は羨ましいですね。「あと10年若かったら良かったな~」と思います。でもね、10年前だったら多分、当選はできなかったと思います。この10年間の経験だとか、得た知識だとかが自分の国家観を作って、それが今度の選挙の基礎になったと思いますからね。


―先生は厚生労働委員会と内閣委員会の委員を務められます。内閣委員会の委員として「こども家庭庁」の審議に参加されたとのことですが、子供の虐待問題についてお伺いします。


松本 虐待の問題というのはこども家庭庁の大きな仕事になると思います。私は日本医科大学千葉北総病院にいた頃に様々な虐待を受けた子供たちを診てきました。虐待を予防し、そして虐待された子供を守り、さらには虐待した親たちにも対応しなければなりません。そのための法律をしっかり作らなければいけないし、後はこども家庭庁そのものが機能しているかどうかを見ていかないといけないと思っています。
 また、今国会では児童福祉法の改正もあります。今は国家資格の社会福祉士とか精神保健福祉士があるのですが、それらに加えて、虐待やいじめとかに対して子供を守るためのソーシャルワーカーを置いて、それを国家資格にしようという意見があります。一方で、「国家資格にする必要があるのか?」といった意見もあって、党内の部会で大きな議論になりました。
 虐待している親って嘘をつくんです。巧みに周囲を騙すんです、虐待していることを。私も実際に医療現場で騙されたこともあります。これは、人と接するという経験をたくさん積まないと絶対に分からないです。4年制大学で学んだ20歳過ぎの若者が、国家資格を持っているからといって、そういう場(虐待家庭)に行って、嘘をついている親を見抜けるかどうか。甚だ怪しいです。「万が一(虐待している親に)騙されて、虐待を見抜けずに(子供が)死んだらどうするんだ」と。若いソーシャルワーカーは、ものすごい罪の意識に苛まれますよね。そんなことは避けなければいけません。
 だから、「この仕組みを軽々に作るのは良くないのではないか。よくよく国家資格を与えることに対しては慎重にしなければならない」という意見を部会でもさせていただきました。「虐待された児童を見たことありますか?」と、現場を知っているからこその意見だと思います。結局、今回の児童福祉法の改正案では子ども家庭福祉を担うソーシャルワーカーを設けることにはなりましたが、国家資格にまで言及することは見送りになりました。現時点では妥当な判断だと思います。
 それでもそんな議論を通して、何とか虐待を無くすための政策的な努力がされています。将来、国を背負って立つ子供たちが健全に育つことができる社会にするために、またそれを支える人たちも守られるために、私も精一杯努力しようと思っています。

【松本尚衆議院議員が見せる気さくな一面】松本氏(右)と一緒に木下駅南骨董市名物のカレーを食べる松本多一郎・自由民主党印西支部長(中央)、中澤俊介・印西市議会議長(左)たち=2021年12月4日、印西市木下


―印西市にも県の児童相談所が近々開設するのですが。松本先生から何かそういった取り組みについてございましたら。


松本 残念ながら虐待は増えているので、児童相談所が一か所増えるということは非常に大きな意味があると思います。本当は増えてはいけないのだけれども、地域で虐待を早く拾い上げて子供を守っていくのと同時に、「どうしたら虐待が無くなるのか」という点に触手を伸ばして仕事をして欲しいなと思います。
 今、児童相談所って大変だと思います。ワガママな親と向き合う場面もあるでしょうし、権限があってもそう簡単に行使できませんし。だから、現場の声は私が拾うので、様々な問題点を挙げてきて欲しいです。そうやって児童相談所の仕事を支援していきたい。
 児童福祉法の改正とかいろいろあって、いま言ったような話も(印西児童相談所が開設する)令和8年度だったら、多分(児童福祉法が)改正された頃と同時並行で進むと思います。

保健所を印西周辺に置きたい


―他に地域の課題はありますか。


松本 保健所を印西周辺にも置きたいですね。今は印旛郡市の保健所が佐倉市にありますが、自然災害や感染症を経験すると、この地域に一か所では足りないと感じます。


ー(印旛)合同庁舎の中に入っていますからね。


松本 そうです。(印旛保健所の)分室でもいいからどこか印西周辺にも設置できないかなと。私の選挙区には保健所が無いので。今の印旛保健所の人たちだけでは管轄地域が広すぎますね。ですので、分室でもいいし、何かしらの対処をしないといけないかなと思っています。
 1990年代の行政改革、平成の市町村合併と言われていますが、1994年には全国で847あった保健所は2020年には469になりました。これに伴って職員数も減少しました。今回の新型コロナウイルス感染症では、感染症法上、保健所が対応することになっているにもかかわらず、圧倒的に職員数が不足していたため、完全にパンクしてしまった保健所も県内には多くみられています。この様な状況では今後、同様の新興感染症が発生した場合に対応していくことは困難でしょう。


ー気の毒になるくらい大変ですからね。


松本 だから選挙区の13区内に保健所が一つあればいいんじゃないかなと思っています。

街頭演説する松本尚衆議院議員(公式Facebookより)


―先ほどの質問にも若干重なりますけど、救急医療や危機管理をやってこられたお立場から、自民党の議論をどのようにお感じになられましたでしょうか?


松本 どうしてもコロナの話になってしまいますが、自民党側から官邸を眺めると、選挙でも訴えたように一体、司令塔が誰なのかが見えません。先日も国会内の委員会で質問をしました。「一体誰が責任者なんだ!?」って。危機管理で一番重要な組織建て、情報の出し方、そんな部分が曖昧なままなんですね。
 コロナ禍になって私が国会議員になるまでの2年の間があったのに、いまだに「司令塔はどうなっているんだ?」と議論しています。「それ、もう解決してないといけないんじゃないの?」と思うのですが、結局、党内で問題を共有できていても、それがそのまま官邸のコロナ対策に反映されているかと言ったら、残念ながらそうはなっていないのです。しかもこの間、2回も政権(安倍内閣~菅内閣~岸田内閣)が変わっているんです。よしんば安倍総理から菅総理の間は、まだこの感染症がどのようなものか分からないから仕方なかったとしても、十分に状況が分かってきた段階では、自民党内で議論していたことは当然、岸田政権においては取り入れて、危機管理のチーム・ビルディングをするというのは本来あっていいはずです。なのに何にも変わっていない。
 実は私が議員になる前ですが、武見敬三参議院議員が中心になって「ガバナンス小委員会」という委員会を作って報告書も出しているんです。党の政調会でも認められているちゃんとした提言をしているのですが、その提言も現政権では生かされていないわけです。なので「何の為に議論しているんだ」って、武見議員は怒ってます。その気持ちはよく分かります。ガバナンス小委員会の報告書を読みましたが、真っ当なことが書いてあるし、私が選挙で訴えたこと、産経新聞で主張したこと、すなわち危機管理とはどう実行するものなのかという内容と同じことが書かれています。だからいまだにそういうことも出来ていないことには正直驚きました。

今年中にDMAT法制化へ


ー選挙の時に「取り組みたい課題と政策」を5つ掲げられていたと思いますが。


松本 私が昨年の選挙で掲げた5つの課題と政策のうち、1番目の「災害派遣医療チーム(DMAT)の法制化」ですが、こちらは早速動き出しています。「どうして法制化が必要か」という大事な部分はもう議論が済んでいて、同時に厚生労働大臣経験者にも今後の進め方を相談しています。厚生労働省もやる気になっていると聞いています。
 2月17日の予算委員会の分科会で30分の質問時間をいただいたので、後藤茂之厚生労働大臣に「DMATの法制化」についての質問をしました。さすがに明確な発言はありませんでしたが、前向きな回答が得られたと理解しています。できれば今年中に何とか法制化できればいいなと考えています。


ーでは、2番目は「創薬等の科学技術研究への投資強化」ですが。


松本 これはすでに去年の補正予算の段階で、新しい経済対策や令和4年度の当初予算案などで、科学技術研究とか創薬などに相当の予算が付いています。「取り組みたい課題と政策」には「投資強化」って書いてありますが、もう私が言うまでもなくこれについてそのまま動いていくと思います。「治験」と言って新しい薬の効果や安全性を確認する臨床実験に協力してくれる人を募集する仕組みは、開発企業に任せるのではなく国が主導して行うことが必要だと思います。国主導の治験です。そうしないと緊急時に新たな薬を迅速に市場に投入することは難しいと思います。そのようなルールはこれから政治家が作っていかなければいけないと思います。


ーでは3番目の「災害に対して復元力のある地域の創造」については。


松本 保健所は平時の公衆衛生だけでなく、自然災害や感染症拡大の非常時に対してもこれからもっと関わっていかないといけないと思っています。さっき言いました「(千葉)13区内に保健所を」というのも一つです。
 それからこれはコロナ禍が落ち着いてから取り組もうと思っているのですが、印西市はたくさんの物流倉庫があるんです。ああいう場所の一角を災害物資の備蓄か何かで使えないかな、とか思っています。倉庫以外だと段ボールとか色々なものを置いても環境が悪いからすぐカビるんです。だけどああいう倉庫はすごく湿度とか管理がいいので、色々な備蓄品を置いておくのに悪くないんです。物流倉庫の一角を無償で貸してもらうなど、何かそういう災害準備って出来ないかなと思っています。


松本 4番目は「医療界を統治する体制の構築」ですね。今度、日本病院会という団体の顧問になったのですが、こういうコネクションを使って医療界が統治できる体制というのを作るきっかけになればと考えています。どの医療系団体も多分、総論は賛成だけど各論だとどうなるの?って話になるので、まずはゆっくり平場で議論をしながら、医療界全体で統治ルールを作れるか、あるいは法律までにしなければいけないかということになるかなと想像しています。法律を作るとなると大変なのですが、そこの議論から始められればいいなと思っています。


松本 最後は「憲法における緊急事態条項の新設」ですね。これは、私が企画委員長をやっております、「ニューレジリエンスフォーラム」という会議体があります。これは医療や経済活動の視点から自然災害や感染症に強い社会作りを目指して議論をし、政府に向けて提言をしようという会議体なのですが、昨年の9月に第一次提言をまとめました。この4月には第二次提言を出して、その後は全国各地で集会をやって「緊急事態条項が必要です」という主張を進めていこうかと思っています。もちろん自民党でも「憲法改正実現本部」の活動が本格化します。その中にも緊急事態条項の新設がありますから、同時並行に国民の皆さんの機運を高めていきたいと思っています。
 私の5つの政策は有権者の皆さんとの約束です。約束ですから守らないといけません。1番目のDMATの法制化は早くも目途が立ってきたかなと思っています。


ーありがとうございます。


松本 次の選挙までに、一つでも(選挙公約が)達成出来たら嬉しいですね。

出口戦略の発信は政府が


ーコロナの問題についてですけれども、政治家として、または医師として提言がございましたらお聞かせ願いますか?


松本 この対談の時点では第6波がピークを迎えたものの、高齢者施設のクラスターがまだ続いている状況です。一方で出口(戦略)の話が本格的に進められていないのは、良くないことだと思います。
 2月4日に予算委員会の参考人質疑で質問できる機会を得ました。厚生労働省のアドバイザリーボード座長で国立感染症研究所の脇田隆宇所長にも、「オミクロン株の特性を踏まえれば、この段階で出口の議論を始めるべきだ」と質問しました。残念ながら積極的な回答はありませんでしたが、このままずっと専門家の言うとおりに「慎重に、慎重に」とやっていたら経済活動の再生は米国にも欧州諸国にも後れを取ってしまいます。


ー誰も口火を切らないですね


松本 「われわれは感染症の専門家ですから」と言ってサイエンスの世界に逃げ込めば、彼らは絶対に失敗しなくて済みますからね。私は専門家だからこそサイエンスの世界から一歩飛び出したところで議論をして欲しいと思っています。でも当分は慎重な意見を繰り返すでしょう。専門家に任せたままにしておくと真剣な出口議論が進むのか分かりません。結局、そういう発信は政府がやらなければいけないのだと思います。誰が言い出すのかは別にしても、この対談が紙面に掲載されるまでには多少は前に進んでいることを希望しますね。
 日本人の身体に感染したのは新型コロナウイルスでしたが、同時に日本人の心に蔓延したのは「同調圧力」です。初めはこれが良い方向に作用して、国民全体が感染対策を実施しました。もともと公衆衛生意識が高いですから感染制御は外国に比べて成功しました。まさに「和を以て貴しと為す」です。
 ところがメディアによる煽り報道が原因で、感染に対する過剰な恐怖が巻き起こって、「マスクを外すことは許さない」とか、「コロナでは誰一人死んではならない」といった“空気”ができてしまいました。いつの間にか身動きが取れなくなって、結果的にいつまでも「出口」の議論を始めることができなくなってしまったのだと思います。コロナ前の生活に戻れるかどうかは、国民全体がこの間違った“空気”を払拭できるかどうかにかかっていると思います。
 今回のオミクロン株は、重症化率は非常に少ないということは分かっています。そういう意味では「もうちょっと冷静に」と思います。また変な株が出てきたらちゃんとモニタリングして、おかしいなと思ったら、また元に戻せばよい。そんなフレキシブルな対応をすればいいだけです。「次に何かあるかもしれないから」と言って、ずっと身動き取れないのはおかしなことだと思います。

政治に関心を持って

「医療の視点から見る安全保障」をテーマに講演する松本尚衆議院議員=2月9日、印西市内


ー最後になりますが、国会議員として、読者である印西市はじめ千葉13区のみなさまに「これだけは伝えておきたい」というのがございましたらお聞かせください。


松本 選挙後にも駅頭に立ったり、辻立ちしたりしています。辻立ちを通して国政報告をしています。できれば定期的に色々なチラシを配布したりして情報提供をしたいと考えています。国政報告はきちんとやります。是非とも感心を持って欲しいです。チラシをポンと捨てずに、ただ通りすがらずに、読んだり聞いたりしてください。このことは有権者の皆様に伝えておきたい点です。


ー政治にもう少し興味と関心を持って欲しいと?

松本 はい。私はいつも言っています。「頼むから、とにかく政治に関心を持ってくれ」と。私が国会で見聞きしたことを、情報を、皆さんにタイムリーに伝えますので、政治に関心を持って頂きたい、それだけです。政治に関心さえ持ってくれたら、日本人のほとんどは、間違いなく、正しい物の考え方をして、正しい選択をします。
関心さえ持ってくれればいいんです。別に保守的な考えを、例えば「憲法改正に賛成しろ」など、そんな言い方しません。関心さえ持ってくれたら自ずと(憲法改正に)賛成になると思います。私はそう信じています。

【プロフィール】1962年6月3日生まれ。1987年金沢大学医学部卒業。金沢大学医学部第2外科学教室等を経て、2000年日本医科大学救急医学教室入局。01年ドクターヘリ事業に参加。同大准教授、同大教授を歴任。21年衆議院千葉13区で初当選。

【利根新報からのお知らせ】

 利根新報5月号から、松本尚衆議院議員のコラム「国会見聞録 見て、聞いて、永田町」を毎月1面に掲載いたします。(WEB版では論説・オピニオン欄に掲載)コラム連載にあたり、松本氏から利根新報読者の皆さんに向けてのコメントをいただきました。
松本尚氏 できるだけ「永田町の中ってどんな雰囲気か」とか、あるいは「国会の中ってどんな感じか」とか、さっきの「舞台装置」の話もそうですけど、率直に私が、素人目線で感じたこととか、見聞きしたことを伝えられればいいかなと思っています。

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