新春企画 議長対談  子育て日本一を目指す印西市・流山市  中澤俊介・印西市議会議長×森亮二・流山市議会議長

新春企画 議長対談  子育て日本一を目指す印西市・流山市  中澤俊介・印西市議会議長×森亮二・流山市議会議長
(右から)中澤俊介・印西市議会議長、森亮二・流山市議会議長
中澤俊介(なかざわ・しゅんすけ)印西市議会議長プロフィール
 1966年11月11日生まれ。B型。印西市木下出身。木下小学校・印西中学校卒業後、八千代松陰高校からラグビーを始める。大東文化大学では86、88年度のラグビー大学選手権優勝、ラグビー競技で2度の国体出場を果たす。山一證券(株)、印西市役所を経て、2007年4月から印西市議会議員となり、以後4期連続当選。21年5月に第16代印西市議会議長に就任。
森亮二(もり・りょうじ)流山市議会議長プロフィール
 1976年6月12日生まれ。流山市立新川小学校、北部中学校、日本大学第一高校、武蔵大学経済学部経済学科卒業。大成建設(株)社員を経て、2003年に当時最年少の26歳で流山市議会議員に初当選。07年にシンクタンク・東京財団政策研究部に在籍し、世界や日本の地方政治・地方自治を研究。11年に流山市議会議員にトップ当選。以降トップ当選を続けて現在4期目。21年5月に第30代流山市議会議長に就任。

シティセールスの先駆け 母になるなら流山市 父になるなら流山市 

 最近は、おかげさまで流山市は全国で人口伸び率が全国1位が6年連続という事で、私たち流山市にも、だいぶ内外から視察含めて問い合わせや、お越しいただいています。特に流山市で有名なのが、シティセールスとかマーケティングとかを、今の市長は早々と取り入れました。
 有名なのが東京都市部で、電車の中刷り広告で「母になるなら流山市 父になるなら流山市」とのコピーを売り出したのが非常に当たって、自治体も「これからは選ばれる街になるためには、シティセールスやプロモーションをやっていく」ということが新たな手法として、市長をはじめ執行部局は特に取り組んでいます。
中澤 流山市のプロモーション効果は絶大ですね。人口は20万人位になっているんですか?
 今は20万8000人ですが、来年(2023年)には21万を超えてくるということです。
中澤 勝ち組ですね。
 そう思います。またモデルケースとして海外からも注目いただいて、視察もJICA、香港、台湾からも来たり、後は野田聖子大臣も少子化担当大臣の時は来られました。国会議員もよく視察に来られます。
中澤 それは凄い。
 その中の目玉の一つが、駅前の「送迎保育ステーション」というものです。流山でメインターゲットにしてきた、夫婦共働きの子育て世代の方が住んだ時に「保育所に入れない」という声が非常にありました。そこで役所側は、市内に点在している保育所を見たときに、実は駅前の保育所は一杯で入れないのですが、駅から離れた保育所は結構空きが出ていて、結局「そこに送ってあげれば保育所の待機児童は少しでも緩和される」ということで、「保育所に送るバスの送迎ステーション」、つまりバス停を、おおたかの森駅前と、今は南流山駅前に作って、そこに子どもを預けると保育所に送ってくれる、というサービスです。
 流山が一番最初に作り、これが当たりまして、今ではだいぶいろんな所でも取り組んでいるのですが、送迎保育ステーションは子育て支援の中でも一丁目一番地として取り上げられている状況です。
中澤 参考になります。印西もおかげさまで人口は多少は伸びているんですけど、流山の半分の10万人、11万人弱ぐらいです。印西市は地域間の格差が激しくて、ニュータウン地区は人口増。かなり大幅に伸びているんですけど、それ以外の地区では過疎化も始まり、高齢化の進展も激しい所や、地域間でかなり格差が出ています。
 学校の方も、本当に教室が不足し、増築・増設を繰り返す地区もあれば、維持するのが精一杯みたいな所もたくさんあります。森さんのお話を伺いながら、子育て世代の流入・転入は、これからの大きな課題だなと思います。

議長会要望 出産育児一時金 42万円→50万円へ

中澤 千葉県の議長会のほうでも要望書を出していた、森さんが先頭に立って取りまとめていただいた案件も、少しずつ前向きに動いているようで、やはり議長会としても、おかげさまでいい形になったんじゃないかな、と思っています。
 ありがとうございます。
中澤 出産一時金は42万円から50万円ぐらいにまで?
 そうですね。10万円ぐらいをアップするものと思われます。
中澤 新年度の予算ですか。
 そうですね。予算に盛り込まれる、というところですね。印西市さんも同じ議長会の仲間たちで声を上げて、それが全国で認められたという所が大きかったなと思います。
中澤 森さんが取りまとめてくれたからですね。
 いえいえ。流山市もですね、多分ひょっとしたら印西市さんもかもしれないのですが、意見書制度をよく利用する風土がありまして、市議会としても毎議会6件から7件の意見書を審議します。全会一致のは当然国に送付されるのですが、私たちは議案1件1件を皆さん真剣に議論して、全会一致でまとまる議案も結構多いんですね。そうした場合には国に堂々と声を上げていこうというのは「流山らしさ」でもありまして、今回議長会の提出議案として、出産一時金の増額を選ばせていただいた時に、印西市さんはじめ議長会のメンバーの皆さんから強力な後押しがあったので良かったな、と思います。
中澤 やはり結果が伴ってくると、いろんな形で私たちも、なかなか地域の人たちに仕事の内容が伝わらないので「こんな事もやっていますよ」と、この場を借りてお伝えできます。
 そうですね。

子育て支援の新制度 妊娠・出産時に10万円

中澤 今後、少子高齢化という大きな課題に対応するため、国、県、市が負担する新たな子育て支援として、妊娠・出産時に10万円相当を給付する「出産・子育て応援交付金」が創設されると聞いています。
 10万円分のクーポンか現金が支給になることから、そのための補正予算案を審議するので、年明けの早い段階で印西市議会が招集される見込みです。
 スピード感をもって実行していきたいと考えておりますので全国議長会からの後押しもお願いします。
森 今回全国市議会議長会の理事メンバーに入っていただく規約になったりしてすごいありがたいですし、一緒になって皆さんで政策を盛り上げていくといいなと思っています。
中澤 そうなんですよ、もちろんいろんな形で懇親を深めるってのも大事ですけど、政策がベースで皆さんで意見を交わしたりとか、よりブラッシュアップして形にしていくのは、理想的な形ですよね。
 そうですね。議長会も全国になると、国と地方の協議の場というので国に対して本当に対等に地方分権の中で意見交換をする時に、やはり足元の議長会がきちっと政策を議論できるっていう環境にしていくってのは大事です。
中澤 そこが一番大事なところです。
 そうですね。住民の皆さんを幸せにしたりするのはやっぱり政策の力だと思うので、私たち地方議員は政策を大事にしていければな、と思いますね。

女性活躍について

 先日、関東の市議会議長会に行ったときに、東村山市の市議会の議長さんと話していて刺激を受けたのは、東村山市議会はほぼ半分が今、女性なんです。
中澤 そうですか。
 最後はどうしても選挙になり、限界はあるかと思うのですが、東村山の市民の方が(議会の)半分女性を送り込んでいるというところは「こういう時代に合わせた議会像のひとつだな」と思い、感銘を受けました。
中澤 流山は何人ぐらいいるんですか?
 今、女性議員は6名おります。最大で28名中7名で4分の1いったんですが、前回の選挙では6名でした。ここからが胸突き八丁なのがどう増えていくかと。一つはオンライン化を進められると「育児しながらも議会に出席できる」というのがあるんですが、やっぱり今は「育児を取るか、議会活動を取るか」みたいな選択肢を迫られてしまうと、地方議員は選ばれない。そこまでの環境整備が無いから、というところがありますね。
中澤 そうですか。印西も決して少ない訳ではないんです。
 今何名ぐらいですか?
中澤 22名中7名いらっしゃいます。
森 私たちより多いですね。
中澤 女性ならではの視点や強み、きめ細かさ。いろんな意味で私も「女性の感性って違うな」と感じることがあります。
 当市議会で、人事改選の際に上手に調整が図られたこととして、4つの常任委員会があるのですが、全部女性になってもらった、というのが、前々回の取り組みとしてありました。これによって、例えば視察調査先の決め方とか、議会運営の決め方、多分印西市さんもやっている議会報告会。
 こういうところでも女性が中心に物事を取りまとめると。スムーズにいかないところもあったのですが、そういうところから議会報告会での育児預かり機能を充実させたりとか、そんな意見が出たのは良かったな、と思いますね。
中澤 印西市も徐々に女性の参加、市政・議会の参画というものも進んでいるな、と日に日に実感することもあります。もちろん男性の力で多少突破しないといけないところもあるじゃないですか。
 それはそれで役割分担が必要だな、というふうに思います。でも、そうやって議会が活性化してね、政策が前に進んでいくようになれば、それが一番理想ですね。
 流山も2009年に議会基本条例ができまして、いいのは「究極の理念」を掲げているんですが、逆にその理念があまりにも高貴な理念なので、そこに従うとなると「議会改革も全会一致、全員が合意しないとダメだ」と、改革するのに合意形成が少し丁寧すぎて時間がかかってしまいます。
中澤 確かにスピード感を優先すると、全員合意して組み立てるってのはなかなか難しいですね。「これ、議長だからまとめ役やって」っていうのがよくありますよね。
 そうですね。
中澤 全員というのは難しいですよね。過半数、大多数というのはよくあるんですけど。全員というのはハードルが高い時がありますよね。
 本当そこは、改革系となると、現状維持の方々もいるとなかなか進まない事はありますよね。
中澤 これはどこも同じだと思いますよ。
 時々、トップダウンとか必要な時はありますよね。

子どもの貧困対策 子ども食堂の運営

中澤 今我が国は実に7人に1人の子どもが貧困状態にあるといわれていますが、流山市での子ども食堂の現状については?
 流山は今は数えているところでは、17食堂が立ち上がっています。
中澤 それはすごい。
 ひとつ特徴なのが、議員さんが個人の活動として子ども食堂に関わられていたりする方が、実は非常に多くて。その結果として良かったなと思うのは、議員の皆さんは人的ネットワークなどが豊富なので、17食堂をネットワーク化させたんですね。そうすると、お互いに「どこで食材が困っている。人が困っている」というのを助け合える仕組みをネットワーク化したことで、100%じゃないけど出来上がりました。
 二つ目のいいところは、そのネットワークの中でお互いを支えるシステムとして、近隣の松戸市の方とかも関わってくれてNPOが立ち上がりました。それが「とうかつ草の根フードバンク」です。企業さんからの食材に関しては、そこのNPOに入ると、加盟しているネットワークにうまく配分される仕組みをできたのかな、というところがあります。
中澤 それはすごい仕組みですね。
 そうですね。それで市にも今までは、当初は「お金的な協力をしてくれ」とか言ってきたんですけど、今のところ市のサポートは広報を中心としたものです。流山は市民活動が活発なので、あんまり行政が関与しないところで、そういう事が今進んでいる状況です。
中澤 これはいい話ですね。印西では単発で子ども食堂というのは数カ所見受けられるんですが、ただ、今のお話のようにネットワークでとか、食材の調達の話とかまでは全然まだ及んでないです。
 私も個人的に議員活動で、というと、どういうやり方がいいのかなと思った時がありました。あとは本当にピンポイントで、キッチンカーみたいに車を使って移動していってはどうかとか、そんなことを考えたことがありました。
森 素晴らしいですね。
中澤 しかし「議員が表立ってやるのもなあ、これはどうかな」というのがあるじゃないですか。
 そうですね。でも流山は、ある程度「○○議員さんが関わっている」という認識の下、市民の皆さんが許容してて、売名行為とかじゃない中で、むしろネットワーク化とか、議員が関わることでのメリットを上手に活かして子ども食堂が全体的に機能しているのかな、と思います。
 私もひとつ還元できたのが、流山市は物流施設計画がすごくて、「東洋一の物流施設」と全部で14棟建つ計画が流山インターチェンジのところで進んでます。そこに大手の外資系物流倉庫さんと、国内トップの物流施設さんが来てくださってるんですが、そこの企業さんが「地域に貢献したい」ということを非常に言ってくださるんですよ。
 その一つの「子ども食堂支援」が今始まっています。一つは日本の国内トップの物流施設運営会社さんが、子ども食堂の子どもに物流施設を見学してもらい、施設の食堂で食事体験をしてもらい、さらには環境教育をやってもらった事がありました。
 子ども食堂に来ている子たちは、なかなか外食できなかったり塾にも行けないので、環境教育をやってくれたんですね。
 これは好評で、企業さん側も、一般の市民だけのレベルだと動かせないけど、私たち議員が関わることでちょっと前に進められやすかったかなと。手前味噌ですが。
中澤 いやいや。素晴らしい。「印西市でもできるんじゃないかな」というヒントがいくつかありました。子ども食堂を必要としている子どもって、意外とこちらが考えているより多いんですよね。
 多いと思います。
中澤 ですから、その子たちの為にも、何とか地元でも、印西でも形にしたいなと思っています。ただ、議員だと寄付行為の問題だとか売名行為だとか、いろんなしがらみが出てきて「表立ってやるのはどうかな」思ったんですけど、今の話を聞いたら、そこは子どもの事を優先に考えれば、そんな事にこだわっている場合じゃないなと。
 そうですね。今のところ(議員が)28人いて、子ども食堂に関わっているのが7、8人位いますね。その方々も会派やグループは違うんですが、連携しあうところはしあって「食材がこっちは豊富だから、ちょっと回そうか」とか、そういう姿を見ていると、本当に「子どもをみんなで助けよう。支えよう」という風土になっていますね。普通だと「選挙目的だ」みたいな話になって足の引っ張り合いになるんですけど、むしろ協力し合ってます。
中澤 売名行為みたいに取られ、そんなつもりは無くても変に誤解されないかな、とか、余計なことを考えちゃいましたね。
 流山の場合は飛び越えてて、子ども食堂では先進的になるのかなと思います。茨城県つくば市の前副市長さんと意見交換した時に「流山市さんのように議員がそこまで関わっている子ども食堂地域はあまりない」と、むしろ驚かれていました。逆にそこでネットワーク化とか成果を上げていることをすごく評価いただいたので、関わっている側からすると「ああ、やってて良かったな」と思います。
中澤 これ、いい話ですね。ありがとうございます。

起業するなら印西市 市内全域無料wi-fi 5G・6G高速通信

中澤 印西市ではデータセンターの立地がかなり多くてなにぶん地盤がいいのと比較的新しい街ニュータウン地区はインフラを含めての基盤整備が進んでいる事から最近大手の外資系の情報通信系のデータセンター、物流倉庫、そういったものの立地がかなり進んでおります。
 最近では、グーグルが記者会見で日本に1000億円ぐらい投資するという発表がありました。グーグルが今、印西市内にデータセンターを作っていてそんなプロジェクトがようやく動き出しました。カナダからの海底ケーブルで情報通信の専用線を引っ張って印西のデータセンターまでつながります。
 私個人の今後のまちづくりの展開なんですけど、せっかくGAFAの一角が地元に来てもらえるという事は、それはそれで喜ばしい事です。しかし「一般市民にとって何の恩恵があるの?」という話になると思うんですね。私もせっかくグーグルが来てくれるんで、「情報通信の方の最先端を行ってみたいな」という思いもあって、これは市民にも還元できると思います。「5G・6GやWi-Fi環境なんかも広く整えたい」とも思っています。
 菅前総理が総務大臣の頃、携帯電話の値下げに着手していた頃から「情報通信の基盤整備には力を入れていきたいな」と思っていて、市内全域どこまでカバーできるかなんですけど、無料のWi-Fiが、それもかなり高速通信のものが使えれば、医療・教育・観光・防災・行政サービス・働き方などにも応用はできますし、そんな街づくりもこれからいいな、と思ってます。そうなる事で「起業するなら印西市」とかどうですか?
 素晴らしいです。
中澤 グーグルがせっかく来てくれたんで、すごい好意的なんですよ。ただ、向こうも何をしていいか分からないので、お互いに探りあってもしょうがないんです。
 デジタル、情報通信の方は、ゆくゆくは高速通信、5Gから6Gへのそういう流れになっていくと思います。特に情報通信系・IT系の所がせっかく来てくれたので、行政とデータセンターが協力して、市内全域をどこまでカバーできるかにもよりますけど、無料Wi-Fiが飛んでいるなんて、これはこれで一つの売りかなと思います。
 なんかグーグルさんを巻き込めると、面白い可能性が広がりますよね。
中澤 そうですね。印西市の人口推計によると、少子高齢化の進展により今後、人口減少局面に突入します。
 子育て世代から選ばれる街へ、加えて企業立地を促進し法人にも選ばれる街へ。
 個人の減少を法人でカバーできるように、起業しやすい魅力的なエリアに成長させ、そこで得た税収を市民に還元する経済の好循環を実現したいと考えております。

【利根新報編集部より】
 両議長とも年末のお忙しいところ弊紙の対談企画に応じていただき、誠にありがとうございます。
 両議長の活躍をご祈念申し上げます。

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