市役所前の千葉銀行ATM、廃止相次ぐ

「利用客は減少」主張も、数字の開示拒む

 千葉県内の各市役所・町役場の敷地内にあった千葉銀行の現金自動預払機(ATM)が、今年1月頃から順次廃止する動きが進んでいる。このうち印西市役所前の同行ATMが1月13日に廃止した件を巡っては、読者から本紙に「新聞で取り上げてほしい」という声が相次いで寄せられている。しかし、取材に対し銀行側は肝心な点で「回答を差し控えさせていただきます」を繰り返した。

1月13日から閉鎖された千葉銀行ATM=印西市役所前

 千葉銀行は印西市指定金融機関にも関わらず、印西市役所前のATMを撤去した件について、同行広報部は「キャッシュレス化が急速に進展し現金の利用機会が減少する一方、提携コンビニATMは多くの台数が設置されており、当行ATMの利用件数は年々減少している」と述べた上で「自治体に設置するATMは特に利用件数が減少しており、減少率やご利用時間帯の取引内訳、提携コンビニATMを含めた周辺ATMネットワークなどを総合的に考慮し、順次廃止することにした」と説明した。
 同行広報部は「利用件数を調査した上で、拠点の維持または廃止の判断をしております」というが、具体的な利用者数の減少を示す数字は「弊行の営業にかかる情報につき、個別具体的な計数等の回答は差し控えさせていただきます」と、開示を拒んだ。
 印西市管財課(現・DX推進課)の担当者は、市役所前ATM撤去について同行から「ネットバンキングが普及して、ATMの管理が難しくなった。(ATMの)手数料収入が見込めなくなった」との趣旨の説明を受けたという。

◆ATMの維持管理費用 負担は銀行か市役所か?

 市では、同行に市役所前ATMを撤去せずに継続して設置するよう交渉したが、同行側から「(ATMの)設置費用負担の問題が出てくるという」と、市に対し同行のATM設置費用や維持管理費用などの負担を求められたという。
 同課によると、これまでは同行からの申し出を受けて、市役所のATM設置場所を同行に貸し付ける形で、市側は維持管理費用など負担せず同行ATMを設置していたという。しかし同行からATM設置費用の負担を求められ、市側は「今までとは逆に、印西市側がお金を払ってATMを置く形になる。市がお金を出してATMを市役所に置いてもらうのは難しい」となり、同行ATMの設置継続を断念したという。
 市では、流通系銀行などのATMを設置できないか調査したが、同課によると「どこの業者も(ATMの)維持管理料は全部有償」と、市の負担が発生するため「行政がATM設置費用を出すのは難しい」として、流通系銀行のATM設置を見送ったという。
 千葉銀行広報部は、ATMの維持管理費用の負担に関する質問に対し「個別的具体的な交渉内容につきましては、回答を差し控えさせていただきます」とコメントした。また、ATMの年間維持管理費用に関しては「弊行の営業にかかる情報」との理由で回答を拒否した。

◆一番近いコンビニまで400M 「代替手段は確保」と言えるのか?

 市役所から一番近いコンビニATMの距離は約400㍍。片道徒歩5分で行けなくもないが、市役所で納税や各種手数料を支払うなど、現金が必要な場面は多い。ATMが市役所敷地内に無いのは、市役所利用者にとってサービス低下と映る。
 同課はコンビニ窓口での納税などを挙げ「市役所で現金での税金納付が減っているのは確か」としつつも「(ATMが)市役所だと駐車場があるので利便性は高い、という声がある」と、市民からの一定の需要がある事を認めてはいる。
 その点について同行広報部は「ご指摘の通り、ATMから現金を引出し(税金を)納付されるお客様はいると認識しているが、口座振替やコンビニ支払い、クレジットカード、インターネットバンキング、スマホ決済など、納付方法は多様化しており、代替手段は確保されていると考えている」とコメントした。
 同課は「国道沿いにコンビニがあり、他にも銀行のATMがあるので、そちらを利用してほしい」としている。

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